サプリメントは「眼に効く」のか? ~食品成分の臨床研究と治療への可能性~

緑内障治療の最前線

食品成分の研究によるサプリメント治療の可能性

最近、「眼科に役立つサプリメント」という特集が、医師や医療関係者が購読する医学専門誌に掲載されました(*1)。これまで医学における「サプリメント」の位置づけは、よく言われる「科学的根拠」の観点から比較的低い印象がありました。しかし、最近は有効な基礎研究や臨床データが次々と出始め、サプリメントのような食品成分に関する研究がサイエンスとして盛んになってきた背景もあり、その位置づけは変化しつつあります。

この特集の中から、眼科におけるサプリメントの現状や緑内障におけるサプリメント治療の可能性、そして、眼科専門医がすすめる摂取のしかたや注意点についてご紹介したいと思います。

眼科における「サプリメント」の現状

一般的に、診療の現場ではサプリメントについて医師から助言をもらえる機会はあまりありません。それはやはり「科学的根拠が少ない」ということと、そもそもサプリメントが医薬品ではなく、「食品」という位置づけになっているからです。

しかし、眼科におけるサプリメントに関して言えば、従来から眼に良いと思われてきた食品の成分が次々とサプリメント化され、ドラッグストアやインターネットで販売されています。その代表的なものは、「ルテイン」や「アントシアニン」で、皆さんが一番よく耳にする成分だと思います。また、「DHA」、「EPA」、「アスタキサンチン」などは眼科でも取り扱っており、医師の管理下で販売されていることもあるようです。

眼科疾患の「治療」として用いられているサプリメント

さらに、実際に眼科疾患の「治療」として用いられているサプリメントもあります。加齢性黄斑変性のサプリメントは、発症予防に関する臨床試験の結果が公表されたことから、実際に疾患予備軍(前駆病変が認められた患者)への積極的な摂取が、予防的治療として推奨されています(*2)。

つまり、サプリメントを「治療」としての導入は、一部の先進的な眼科で始まっており、今後、眼の病気の予防や症状を和らげる目的でサプリメントが推奨される機会が増えてくる可能性が考えられます。

緑内障のサプリメントによる治療の可能性

では、緑内障の「治療」として、サプリメントが使用されるようになるのでしょうか?

この点は、以前、「眼圧以外の新たな治療法への道」でご紹介した「抗酸化作用」がキーワードとなります。この抗酸化作用(活性酸素を消去する力)をもつ「抗酸化物質」を摂取することで緑内障進行を抑制できる可能性から、食生活の改善は将来の緑内障治療の一つとして期待されています。

たとえば、食生活の改善という点から行われた臨床研究をみてみると、ビタミンAやビタミンC、αカロテンを摂取することが緑内障になるリスクを減らしているという報告(*3)や、緑内障患者がイチョウ葉エキスを内服することで網膜の血流が改善したという報告(*4)があります。

また、イチョウ葉エキス、ビタミン、コエンザイムQ10などの抗酸化物質を含むサプリメントの摂取により、眼血流が改善したという報告(*5)や、以前ご紹介したミカンの皮に含まれる成分で抗酸化作用がある「ヘスペリジン」に視神経保護効果を認めたという報告(*6)があります。

これらの研究成果は、食生活の改善や抗酸化物質を多く含む食品の摂取によって、緑内障の発症や進行を予防できる可能性を示しています。そして、このような有効成分を食事のみから摂取することは難しいため、必要な成分を必要な量だけ摂取できるサプリメントは非常に有用であると考えられます。

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緑内障においては、このような食品成分の効果についての臨床研究が進行中であり、いわゆる「科学的根拠」を一つ一つ積み上げているところといえます。このような研究で効果が次々と証明されることで、加齢性黄斑変性のように緑内障においても「治療」としてサプリメントが処方される日も近いかもしれません。

「摂りすぎ」注意!利用している成分をしっかり把握すること

ここで、注意しなければならないのは、体にいいからといっていろいろなサプリメントを一度に摂取するのは良くないということです。

よく言われていることですが、サプリメントは長期間摂取するので、商品を選ぶ際は内容をよく検討したうえで、実際に摂取してみて本人に合ったものをみつけることが重要とされています。

最近、初診で病院にかかる際や薬局で、服用している薬についての質問のほかに、「サプリメントを日常的に摂取していますか?」という質問が問診票に記載されているのをご存知ですか?これは、服用している薬の作用をサプリメントの成分が邪魔をしていないか、良いと思って摂取している成分がむしろ弊害になっている可能性はないのか、という観点から大切な質問項目となっています。サプリメントを日常的に摂取する場合は、商品のパッケージや説明書に記載されている成分表を持ち歩くと良いかもしれません。

サプリメントは、食事だけでは得られない成分を凝縮して摂取できる、という便利で手軽な食品です。しかしその一方で、通常の食事から摂取する程度の量では問題がない成分でも、サプリメントでは簡単に過剰摂取の状態に陥ってしまう可能性があります。また、ごく微量でも「薬」に相当するような影響を人体に及ぼす成分があります。

サプリメントを利用する際は、その成分を確認し、重複しているものはないか、過剰摂取になっていないか等、自身でしっかりと把握しましょう。そして、体調の変化がないか、症状の悪化がないか、注意深く自己観察し、なにか不都合を感じたら迷わずに中止し、医師に相談するように心がけましょう。

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引用、参考

*1 あたらしい眼科vol.35 No.6.p761-767, 2018

*2 日本眼科学http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/aging_macular_degeneration.jsp

*3 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18355790

*4 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3178766/

*5 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28772005

*6 https://www.nature.com/articles/s41598-017-06969-4

 

この記事を書いた人
doctor

横浜市立大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。日本とアメリカで、癌を早期発見・診断するための分子標的薬の研究に従事。現在は、1人でも多く早期発見することを目標に、予防医療の現場で活躍中。自身も強度近視から生じる網膜疾患を発症。視力と視野の維持のために情報収集をしている際、ネットにおける医学研究の紹介やその内容はまだまだ分かりづらい、と実感。患者さんに「医学研究」をより身近に感じて、自分の病気との関わりを実感してもらえるよう、執筆活動を開始。

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